緊縮制御因子が合成するppGppはバクテリアのグローバルレギュレーターとして知られる核酸分子であり、GTP結合タンパク質をターゲットとしてその機能を制御することが知られている。ppGppの葉緑体における機能を検証するため、平成22年度は、エンドウマメの芽生えより葉緑体を単離し、その抽出液を用いたin vitro翻訳系の構築を進め、タンパク質合成活性のある抽出液の調製に成功した。続いて、この抽出液を用いることにより、ppGppが葉緑体の翻訳系の阻害効果を有することを生化学的に証明した。翻訳装置は70Sリボソームのみならず数十のタンパク質およびRNA分子が機能することにより稼働するため、具体的な標的候補分子の探索は困難である。従って、葉緑体の翻訳装置において、まずペプチド伸長反応に焦点を絞ってppGppの機能解析を進めた。その結果、ppGppが伸長反応を阻害することが確認され、さらにこの効果がGDPの存在に影響されないことを明らかにすることができた。成果は学会発表にて公表し、現在、論文投稿準備中である。平行して、RSH1欠損イネの葉緑体遺伝子の転写解析系の構築を進めるとともに、全長でのタンパク質合成が困難なRSH1のドメイン単位でのタンパク質合成を進め、まだ見出されていないppGpp加水分解酵素の機能の探索を進めている。
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