研究課題
緊縮制御は原核生物(バクテリア)に共通する環境ストレス応答機構であり、ppGppというグアニン由来の核酸化合物がシグナル物質として複製、転写、翻訳、核酸生合成など複数の生命システムを制御する。その作用規模の広さよりグローバルレギュレーターとも称されている重要な分子である。研究代表者は、このppGpp分子の合成系酵素が植物葉緑体にも存在する事をこれまでに明らかにするとともに、複数のppGpp合成酵素遺伝子の単離および機能解析を進め論文および学会発表の形で成果報告を進めてきた。平成23年度の本研究課題では、22年度に確立したエンドウマメの単離葉緑体由来の試験管内タンパク質合成系を利用し、ppGppの翻訳への阻害的機能を証明し、論文および学会で報告した(Nomura等,Plant MolBiol,2011)。植物細胞には細胞質、葉緑体、ミトコンドリアと3カ所に異なるタンパク質合成システムが存在する。そのために、通常の細胞破壊により得られる抽出液では特定のタンパク質合成装置の機能解析は実施不可能である。従って、まず細胞より葉緑体のみを高度に精製し、この単離葉緑体の抽出液を利用することによりはじめて葉緑体内のタンパク質合成システムの解析が可能となる。これまでに葉緑体のタンパク質合成系の構築に成功した研究室は名古屋大学のタバコのシステムのみであったため、エンドウマメ葉緑体タンパク質合成系の構築は技術的にも高い達成度であると考える。さらに立教大学と共同で、バクテリア緊縮制御機構における新規のシグナル物質の存在とその機能を明らかにすることに成功し、投稿論文が受理された(Tagami等,MicrobiologyOpen)。この成果は、葉緑体内のシステムとも共通性を有する可能性が高く、今後のバクテリアおよび植物葉縁体における緊縮制御機能の解明に極めて重要な科学的発見と考えている。
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MicrobiologyOpen
巻: (印刷中)
doi:10.1002/mbo3.16
Plant Molecular Biology
巻: 78 ページ: 185-196
doi:10.1007/s11103-011-9858-x
Plant Biology
巻: 13 ページ: 609-709