高等植物のペルオキシソームは、過酸化水素の生成と分解というペルオキシソームとしての普遍的な機能を持つほかに、細胞分化や環境変化に応じて脂質分解や光呼吸などの特定の機能を特化させるという他の生物には見られない際だった特徴を持っている。PEX16は、小胞体で合成された後、ペルオキシソームへ輸送される膜タンパク質である。分子遺伝学的な解析から、ペルオキシソームの形成に重要な役割を果たしていると推測されているが、その詳細は明かになっていない。PEX16の分子機作を解明することをめざして、初年度は以下の検討を行った。 1)GFPをPEX16やマトリックスタンパク質のレセプターであるPEX7と融合させたGFP-PEX16およびGFP-PEX7を過剰発現するシロイヌナズナ形質転換体から総タンパク質を抽出し、GFP抗体で免疫沈降させた。沈殿物に含まれるタンパク質を電気泳動後、質量分析機にて多数同定した。その結果、PEX16やPEX7と結合している可能性のあるタンパク質を、それぞれ5種および30種決定することに成功した。現在、これらのタンパク質が細胞内でPEX16やPEX7と複合体を形成しているかどうかについて検討するとともに、T-DNA挿入変異体を用いてタンパク質の機能解析を試みている。 2)GFP-PEX16過剰発現するシロイヌナズナ形質転換体のEMS処理を行い、M2種子の単離を試みた。ただし、従来の方法ではEMS処理後のM1植物を正常に育てることができないことが判明し、生育法を検討中である。
|