研究課題
本研究課題の申請者らは、乾燥などの環境ストレスに対する応答と、種子成熟において重要な役割をもつアブシシン酸(ABA)が、遺伝子発現を制御している機構を研究してきた。最近、申請者らは、シロイヌナズナのABA応答性遺伝子発現に関わっているタンパク質リン酸化酵素SnRK2の三重変異体srk2d srk2e srk2iが、穂発芽を起こすことを明らかにした。本研究では穂発芽変異体の解析を通じて、SnRK2による種子成熟・休眠・発芽の制御機構を明らかにする。平成21年度は、穂発芽変異体srk2d srk2e srk2iの表現型、および遺伝子発現を解析した。平成22年度は、変異体等を用いて、穂発芽制御に関わるSnRK2と種子関連bZIP型転写因子との関係を解析した。まず、srk2d srk2e srk2i変異体種子では、ABI5ならびにABI5に相同性が高く種子成熟期に発現しているbZIP型転写因子群の遺伝子の発現が変化していることが確認された。また、種子成熟期に発現しているbZIP型転写因子群のリン酸化は、野生型種子で起きているがsrk2d srk2e srk2i変異体種子では起きていないことを、ゲル内リン酸化実験で確認した。ついで、種子関連bZIP型転写因子群の変異体をリソースセンターから変異体を取り寄せ、発芽に関わる表現型を解析した。ABI5の変異体ならびに種子関連bZIP型転写因子等の変異体においては、srk2d srk2e srk2iで観察されたような穂発芽の表現型は見られなかった。ABI5の変異体種子を用いたABA感受性発芽試験を行ったところ、ABA非感受性発芽が観察されたが、srk2d srk2e srk2i変異体のABA非感受性よりも弱かった。他の種子関連bZIP型転写因子eel等の変異体においては、有意なABA感受性の変化は見られなかった。
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Plant & Cell Physiology
巻: 51 ページ: 1821-1839