研究課題
本研究課題の申請者らは、乾燥などの環境ストレスに対する応答と、種子成熟において重要な役割をもつアブシシン酸(ABA)が、遺伝子発現を制御している機構を研究してきた。申請者らは、シロイヌナズナのABA応答性遺伝子発現に関わっているタンパク質リン酸化酵素SnRK2の三重変異体srk2d srk2e srk2i(srk2dei)が穂発芽を起こすことを明らかにした。本研究では穂発芽変異体の解析を通じて、SnRK2による種子成熟・休眠・発芽の制御機構を明らかにすることを目的に実施した。21年度は、穂発芽変異体srk2deiの表現型および遺伝子発現を解析し、22年度は、主にsrk2dei変異体を用いて、穂発芽制御に関わるSnRK2と種子関連bZIP型転写因子との関係を解析した。23年度は、シロイヌナズナのプロトプラストを用いた実験系において、種子関連bZIP型転写因子EEL、AtDPBF2、AREB3が、ABI5と同様にABA依存的遺伝子発現を誘導することを明らかにした。一方、穂発芽変異体srk2dei種子のマイクロアレイ解析の結果をもとに、穂発芽に関わることが推定された代表的遺伝子について、リソースセンターから変異体を取り寄せて、種子成熟、休眠、発芽に関わる表現型を解析したが、abi3、abi5以外に、野生型種子との有意な違いを示す変異体は見出されなかった。以上の結果から、3種類の相同性が高いSnRK2タンパク質リン酸化酵素であるSRK2D、SRK2E、SRK2Iは、ABAシグナル伝達の重要なポジティブレギュレーターであり、種子で発現しているbZIP型転写因子ABI5等のリン酸化を通じた広範囲にわたるABA応答性遺伝子の発現制御により、種子成熟、休眠、発芽をコントロールしていることが示唆された。
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Biochim Biophys Acta
巻: 1819 ページ: 97-103
DOI:10.1016/j.bbagrm.2011.10.005