共発現するストレス応答性の非翻訳性アンチセンスRNAの生成メカニズムおよび機能の解析に関して本年度の成果は下記の通りである。 1.シロイヌナズナに6つあるRNA-dependent RNA polymeraseをターゲットしたRNAiラインを作成した。その中には各RDR遺伝子の発現が幾らか抑制されたものも存在していた。RDR遺伝子の発現がより抑制されたラインの選抜を進めており、その後その抑制されたラインを用いてRD29A遺伝子のアンチセンスRNAの蓄積を調べる予定である。 2.以前発見したアンチセンスRNAの蓄積に関わると考えられる遺伝子1とHAタグの融合遺伝子を遺伝子1の欠損変異体へ導入した。今後、このラインを用いて遺伝子1がタンパク質として機能する事の確認を進めるとともに遺伝子1と相互作用する因子の探索を進める予定である。 3.RNA分解に関わると考えられる遺伝子5個由来のホモ変異型ラインを新たに10ライン作製した。 4.RDR2およびDCL3遺伝子の欠損変異体では、RD29A遺伝子のアンチセンスRNAの蓄積に顕著な違いはなかった。この結果から、この機構にクロマチン経路のsiRNAは関与しないことが示唆された。 5.人工(artificial)miRNAの技術を用いて、RD29A遺伝子のアンチセンスRNAを抑制させたトランスジェニック植物系統の作製を進めている。 6.シロイヌナズナタイリングアレイを用いて種々の条件下で遺伝子発現プロファイル解析を行った。その結果、アンチセンスRNAとセンスRNAは、環境ストレス応答に関しては共発現する傾向が観察されたのに対して、植物組織(特に乾燥種子や吸水種子)においては共発現の現象はあまり観察されなかった。
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