研究概要 |
無脊椎動物のゴナドトロピン(生殖腺刺激ホルモン)として、最初に同定されたイトマキヒトデの生殖巣刺激物質(gonad-stimulating substance, GSS)について、本研究では、ヒトデをモデルに卵の最終成熟制御機構を解明することを目的として、GSSの合成・分泌・作用機構について研究を行う。 研究2年目の成果として、GSS産生細胞の発現時期を特定するため、イトマキヒトデ卵を受精し、発生させ、変態後まで飼育したところ、GSS活性はブラキオラリア幼生以降で検出された。ことから、GSS産生細胞は、変態前の幼生期で出現し、GSSを生産している可能性が示唆された。 一方、GSSの作用機構として、[^<125>I]でラベル化した[^<125>I]-GSSを作成し、卵濾胞細胞を核、ミトコンドリア、細胞膜/ミクロソーム、細胞質の各画分に分け、GSSとの結合実験をおこなったところ、細胞膜/ミクロソーム画分に強い結合が見られた。このことから、GSSの受容体は濾胞細胞の細胞膜上に分布していることが示唆された。Kd値は約0.6nMで、1個の濾胞細胞当たりのGSS受容体数は約40,000と推定された。さらに、G-protein抗体を用いたWestcm-blotの結果から、濾胞細胞膜には促進系(Gs)と抑制系(Gi)の2種類のG-proteinが存在することが確認された。また、アデニル酸シクラーゼはGSSにより活性化され、この時にGTPを必要としていたことから、GSSの作用として、受容体/G-protein/アデニル酸シクラーゼを活性することが強く示唆される。 以上、GSSはイトマキヒトデの初期発生の段階から発現している可能性が示唆された。また、GSSは卵濾胞細胞表面にある受容体に作用し、G-protein/アデニル酸シクラーゼを活性化することから、GSS受容体はGPCRである可能性が高い。
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