研究概要 |
21年度は遠心機と照明装置を用いて植物に長期間過重力を与える実験系を構築し,構築した長期過重力栽培実験系で生育させた植物体を用いて,栄養生長に関しては,側枝や葉の大きさ・角度などシュートの形態,二次木部に着目して形態学的解析を行うことをめざした。生殖生長に関しては,分子レベルでの知見をてがかりとして,まずどの時期にどの部分を比較するのかを決め,これをもとに花芽・花器官から種子に至るまでの様々な形態学的パラメータに重力が与える影響を調べることをめざした。 長期間過重力を与える栽培装置の開発については,遠心機を用いて植物に長期間過重力(数Gから数百G)を与える実験系のうち,遠心を与える部分はほぼ完成したが,照明システムは製作中である.従って,長期間処理が必要な生殖生長に関しては,形態学的パラメータに過重力が与える影響を調べるところまでは至らなかった.一方で,生殖生長については現象レベルでの手がかりがまだ余りに少ないため,短期過重力処理の実験系を用いて,プロテオーム解析を進めた.その結果,過重力処理直後の花芽において、対照区と比べていくつかのタンパク質のスポットで変化がみられ,エチレン合成系や酸化ストレス応答に関わる可能性のあるタンパク質の発現が変化する可能性が示唆された. また抗重力反応において,植物ホルモンであるエチレンのシグナリングの関与について調べるためエチレンシグナリングに関わる突然変異体を用いて,短期過重力処理がリグニン含量やいくつかのリグニン合成系遺伝子の発現に与える影響を調べた.その結果,花茎の形態やリグニン含量,調べた遺伝子の発現変化が変異体では変化が見られなかった.これにより,過重力刺激によるリグニン合成系の促進においては,エチレンシグナリングが関与することが強く示唆された. また小規模ではあるが,長期間過重力を与える実験系を予備的に構築し,主に栄養生長に関して,シュートの形態およびリグニン含量に10Gの過重力が与える影響について,形態学的解析を行った.その結果,長期の過重力により花茎の乾燥重量やリグニン含量の増加が見られ,抗重力反応が促進されたことが示唆をれた. 国際宇宙ステーション「きぼう」棟における微小重力実験とともに,軌道上および地上1G対照区の実験を行った。
|