研究概要 |
一昨年度までの研究により、fruitless(fru)発現味覚ニューロン群に性差が存在し、その投射パターンの性差形成にfru遺伝子が関与していることが示された。一方、fru遺伝子以外の要因も示唆された。そこで、もう一つの性決定因子Doublesex(Dsx)に注目し、味覚ニューロンの性差形成におけるDsxの役割をさらに解析した。dsx-Gal4系統を利用し、味覚ニューロンをGFPにより標識し、dex発現ニューロンが〓節のどの味覚器に存在するか調査したところ、特定の感覚毛で発現することがわかった。またそれらの中枢投射パターンは、fru発現ニューロンと同様性差を示した。dsx発現とfru発現は、一部のニューロンでは共発現するが、それぞれ単独に発現するニューロンも存在した。 fru遺伝子やdsx遺伝子の機能阻害を味覚ニューロンで行い、性的二型投射パターンを特異的に変更可能か検証した。味覚ニューロン群にfruRNAi遺伝子を強制発現しfru遺伝子の発現作用を抑制すると、雄の投射パターンは雌化した。また、雌型Dsx(DsxF)タンパク質を味覚ニューロンに強制発現させると、同様に雄の投射パターンは雌型に変更された。この結果は、今後の行動解析に利用することができる。 同定されている味覚レセプター遺伝子(Gr)の発現を観察できるレポーター系統を用い、性差を示す味覚ニューロンで発現する味覚レセプター同定を試みた。甘みに関する味覚レセプター(Gr5a,Gr64f)や苦みに関する味覚レセプター(Gr66a)、雄が忌避するフェロモンに関与するとされている味覚レセプター(Gr32a,Gr66a)は、いずれも性差を示す味覚ニューロンでは発現しておらず、その投射領域も異なることが示された。性差を示す味覚ニューロンで特異的に発現するGrは、まだ不明である。
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