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2011 年度 実績報告書

硬さ可変結合組織研究の総括

研究課題

研究課題/領域番号 21570075
研究機関東京工業大学

研究代表者

本川 達雄  東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (80092352)

キーワードキャッチ結合組織 / 棘皮動物 / ナマコ / ヒトデ / 硬さ / 酸素消費量
研究概要

キャッチ結合組織とは硬さの変わる結合組織である。硬さは細胞外の高分子(コラーゲンなど)の間の架橋が変わることによると想像されており、硬化を起こすタンパクはすでに報告した。本年度はナマコ体壁真皮(代表的なキャッチ結合組織)から、軟化因子の抽出を試みた。因子の効果は、トリトンX-100処理をして細胞を破壊した真皮において検定したが、これは細胞外成分に直接効く因子を求めたかったからである。軟らかくしたシカクナマコ真皮を5MNaC1緩衝液で抽出したものには、軟化活性があった。これをゲル濾過、陰イオン交換カラム、さらに低分子用のゲル濾過カラムを通すと、推定分子量6.5kDaの画分に軟化活性が出た。キャッチ結合組織は軟らかい状態、標準状態、硬い状態の3つの状態をとることができるが、この軟化因子は標準状態からの軟化を引き起こすものである。
硬さ変化に伴うエネルギー消費量を酸素消費率の測定から見積もった。シカクナマコ体壁の真皮、パイプウニのキャッチアパレータス、アオヒトデの体壁真皮において、各状態での酸素消費率を測定したところ、軟らかい状態で一番大きく、次が硬い状態、一番少ないのが標準状態であった。硬い状態ではどの結合組織でも標準状態の1.5倍の酸素を消費した。軟らかい状態では標準状態の2-9倍の消費率だったが、それでも弛緩中の筋のものより少なかった。ナマコ個体の酸素消費率を測定し、キャッチ結合組織の酸素消費がその内のどれくらいの割合を占めているかを見積もったところ、標準状態では個体の消費量の1/4、硬い状態では1/3、軟らかい状態では3/4となった。キャッチ結合組織のエネルギー消費量は、個体のエネルギー消費量のかなりの部分を占めていた。棘皮動物は個体のエネルギー消費量が他の動物に比べて極端に低い。キャッチ結合組織が少ないエネルギー消費で支持機能をはたしていることが、そのことに大きく寄与していることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目的として3つをあげた。1軟化因子の探索は、まず目途がついた。2のヒトデ真皮の酸素消費率は、すでに測定を完了して論文投稿し、わずかの直しで掲載可という返事をもらい、書き直し中である。3のテンシリン分泌細胞の研究は、埼玉医科大学と共同研究をすることになり、試料の準備段階である。よって、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

キャッチ結合組織の硬さ変化の分子メカニズムについては、軟化因子の正体にせまりたい。収率をもっとあげてから、アミノ酸の部分配列の解読にかかる予定である。キャッチ結合組織の神経支配に関しては、テンシリン分泌細胞の局在の研究を続けると共に、ウニキャッチアパレータスにおける神経支配を、NGFFFamideの関与や、棘筋の活動との相関、放射神経の関与等につき、調べていくつもりである。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Mechanical mutability in connective tissue of starfish body wall2011

    • 著者名/発表者名
      Motokawa, T.
    • 雑誌名

      Biological Bulletin

      巻: 221 ページ: 280-289

    • 査読あり
  • [学会発表] ガンガゼDiadema setosumの歩行における棘と管足の役割について2011

    • 著者名/発表者名
      幾原綾美・吉村和也・本川達雄
    • 学会等名
      日本棘皮動物研究集会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2011-12-10
  • [学会発表] ヒトデ体壁のキャッチ結合組織2011

    • 著者名/発表者名
      本川達雄
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      大雪アリーナ
    • 年月日
      2011-09-22
  • [学会発表] 楕円形の正形類ウニも壁に接触していた部分を先頭にして進む2011

    • 著者名/発表者名
      吉村和也・本川達雄
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      大雪アリーナ
    • 年月日
      2011-09-21
  • [学会発表] 細胞を破壊したナマコ真皮に対する真皮抽出物の効果2011

    • 著者名/発表者名
      竹花康弘・池谷知明・山田章・田守正樹・本川達雄
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      大雪アリーナ
    • 年月日
      2011-09-21
  • [図書] 生物学的文明論2011

    • 著者名/発表者名
      本川達雄
    • 総ページ数
      250
    • 出版者
      新潮社

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公開日: 2013-06-26  

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