本年度はTrx/Grx系の酵素群を含む五価バナジウム還元カスケードの解析、特にシステイン残基の関与に関する研究を実施した。さらにTrx/Grx系と関連するGSH合成経路とMRP輸送体についての研究も行った。 1.Trx/Grx系の酵素群と新規redoxタンパク質の局在解析 前年度に引き続いてcDNAライブラリーから酸化還元・電子伝達系の遺伝子とタンパク質について、VとFeやCuイオンの添加に反応する遺伝子群をマイクロアレイを用いて網羅的に探索した。得られたタンパク質・遺伝子の組織局在(特にバナドサイトに局在するか否か)をRT-PCRと免疫学的手法で明らかにした。 2.GSH合成経路の酵素群の遺伝子発現調節を、マイクロアレイとRT-PCRおよび酵素活性測定によって検証した。これら酵素群の発現・活性とバナジウム濃縮とが密接につながっていることを見出した。またMRP遺伝子の発現も同様の調節を受けることを見出した。 3.四価への還元カスケードの解析 前年度に引き続いてTrx/Grx系を含むカスケードの反応をin vitro実験で確認した。AsTrx1とAsTrxR2の全長をクローニングし、それらの組み換えタンパク質を用いて還元能を調べたところ、AsTrx1はVanabin2のジスルフィドをチオールに還元することとAsTrx1存在下でVanabin2が五価バナジウムを四価に還元することが分かった。なお、Trx familyに属するGrxのクローニングはまだ成功していない。 4.Trxのシステイン残基の酸化還元状態と中間体形成について、移動度検定法によって解析した。一定濃度の還元剤存在下で中間体を形成することを見出した。
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