研究課題
神経系の起原ともいえる消化管神経系の構造と機能を比較生理学的に明らかにする目的で、様々な動物門から代表的な実験動物を選び、その消化管について研究を進めた。軟体動物のアメフラシおよびモノアラガイの比較生理学的研究から両者の消化管の自律的収縮運動のリズムがともに消化管神経系内のニューロン群に起原する、すなわち神経原性の消化管運動が存在すること、そのニューロン群の存在場所が両動物で異なる一方、いずれもその部位から上行性に消化管神経系内をインパルスが伝播していることを明らかにした。両動物において、この上行性の神経活動が消化管の下降性蠕動運動を惹き起すという一見矛盾した現象を見いだした。アメフラシでは上部に伝播した神経活動が上位で蠕動運動のスタートのみをトリガーし、蠕動自身は神経活動とは独立に伝播していた。これに対して、モノアラガイでは各部の蠕動の収縮が神経活動によって直接惹起されていた。これには、神経活動が生じてから最大収縮に達するまでの時間が、下位ほど長いことが関わっていることが明らかになった。棘皮動物マナマコの消化管をグリオキシ酸処理し、消化管神経系内のモノアミン作動性神経の検出を行ったところ食道から下降性小腸の前部までのみに陽性反応を示す細胞体や神経プロセスが検出され、その密度は消化管の上位ほど高かった。神経繊維は消化管の縦方向に走行するものが多く観察された。免疫細胞化学的にセロトニン免疫陽性反応は検出されなかったことから、これらの細胞体や神経プロセスは、カテコールアミン作動性と判断した。原索動物のマボヤとともに、マナマコにおいて、自律的運動の起原については、軟体動物でみられたような神経原性の運動の存在を示す証拠はまだ得られていなが、2年次以降に電気生理学的に詳細に検討するための基礎となる消化管神経系の組織、解剖学的知見を蓄積した。
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Zoological Science (印刷中)
Comparative physiology and Biochemistry A 154
ページ: 33-340
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