研究概要 |
1 タロイモショウジョウバエ(Colocasiomyia)属内の系統関係を形態形質とDNA塩基配列情報を使って明らかにした.形態形質による系統解析では,26種について71形質を用いて分岐分析を行った.分子系統解析では,43種63個体について核遺伝子の28SrRNAの塩基配列情報を用いて最尤法によって解析した.結果は,よく一致しており,(1)既知の種群はそれぞれ非常に信頼性の高い単系統群として認識され,(2)これまで種群の所属が不明であった2(+1)種は単系統群を形成するが,(3)種群間の系統関係の解像度は依然として低かった. 2 新しく認識された単系統群は,さらに中国雲南省から発見された4新種を含めて,新種群(C. gigantea種群)として設立される.この種群の構成種は,全てサトイモ科ホウライショウ亜科(Mosteroideae)の花序・果実序で繁殖することが判明し,特に,これまで謎であったC. giganteaの非常に特異な生活史のほぼ全貌を明らかできた.(1)本種の成虫は,寄主植物Epipremnum pinnatumの花序が開花するとすぐに(♀期 : 受粉期)訪花し,翌日の♂期(花粉分泌期)まで滞在する : この訪花習性は,本種の成虫が寄主植物にとって重要な花粉媒介者であることを示唆する.(2)♀成虫は,雌花の側面に産卵する.(3)胚発生はゆっくり進行し,少なくとも1週間以上かかって,卵殻内に初齢幼虫ができる.(4)初齢幼虫はすぐに孵化することなく,長く(多分数ヵ月以上)卵殻内にとどまる.(5)寄主植物の果実序が成熟し,雌花下部に成熟果実ができると,雌花上部が開裂する.それと同時に,初齢幼虫が孵化し,成熟果実の果肉を食べ始める.(6)幼虫期,蛹期は比較的短く,それぞれ約1週間,約5日間ほどで,成虫が羽化する. 3 これまでに蓄積したタロイモショウジョウバエ属の自然史に関する情報の一部を,総説として発表した.
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