研究概要 |
本研究が目的とするハラホソバチ亜科(Stenogastrinae)7属の分布パターンの成立過程の解明ならびに本亜科にみられる多様な社会性にかかわる特徴の「進化上の極性」(原始的か、派生的か)を生息環境への適応も含めて考察する基礎となる系統関係解析を行った。解析には、外群としてドロバチ亜科8種、アシナガバチ亜科20種、スズメバチ亜科12種、また内群としてハラホソバチ亜科のAnischnogaster2種、Cochlischnogaster1種、Eustenogaster12種、Liostenogaster7種、Metischnogaster2種、Parischnogaster6種とStenogaster2種について、走査型電子顕微鏡による詳細な観察も含めた成虫形態のデータ、また、上記の外群についてはすべての種、ハラホソバチ亜科についてはStenogasterを除く6属それぞれで少なくとも1種、合計24種の分子データを用いた。その結果、ハラホソバチ亜科の属間の関係は(Parischnogaster+(Metischnogaster+Cochlischnogaster))+((Eustenogaster+(Stenogaster,Anischnogaster+Liostenogaster))となった。 これは、Eustenogasterで見られる一時的なワーカーすら欠き、コロニー創設雌のみで子の養育をする亜社会性が二次的に進化したこと、ならびにLiostenogasterの一部の種で見られる泥を用いた造巣が二次的に進化したことを示唆するものである。共に社会性狩蜂では原始的と考えられてきた行動形質が、ハラホソバチ類では派生的であるといえる。
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