従来の六脚類(広義の昆虫類)の高次系統は、最近、多方面からのチャレンジを受けている。近年の分子進化学的アプローチを含め、議論は定まらず、争点は「内顎類」のステータスとそれを構成する3目の類縁関係、コムシ目の単系統性に関わるものである。本研究は、内顎類の唯一、最重要とされてきた、内顎類構成群の「共有派生形質」である「内顎口」の形成過程を、内顎類全3目、コムシ目の全2亜目、トビムシ目全2亜目を対象に詳細に比較検討することにより、上記の問題に切り込もうとするものである。本研究からもたらされるであろう成果は、昆虫類のベーサルクレードの系統関係に関する議論に大きなインパクトを与えるものであり、昆虫類の高次系統の再構築に繋がるものである。 最終年度であった本年度は、カマアシムシ目およびコムシ目の内顎口形成様式に関して、補完すべきデータを集めることを一つの目的とした。これに関しては、コムシ目に関して新たにナガコムシ亜目を検討するなど、ほぼ目的を果たすことができた。トビムシ目の内顎口形成に関しては、一方のマルトビムシ亜目に関して詳細なデータを得ることはできなかったが、ほぼ、同目の内顎口形成のグラウンドプランを明らかにすることができた。 以上を基に、カマアシムシ目とトビムシ目の内顎口形成は同様のグラウンドプランをもつ一方、コムシ目のそれはこれらとは大きく異なっていることが明らかになった。したがって、欠尾類は支持されるものの、内顎類の単系統性は再検討されるべきものであると結論づけられた。以上の成果は、第5回ドレスデン昆虫系統学ミーティングで4題め招待講演として発表された。これらの成果を論文にすべく、現在準備中である。
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