本研究は、クロララクニオン藻の主要系統群全てについて、タイムラプスビデオ解析、間接蛍光抗体法、電子顕微鏡などにより、細胞分裂過程の微小管の動態まで含めた詳細な観察を行ない、クロララクニオン藻の分裂様式の特徴を明確にするとともに、群内の細胞分裂様式の多様性を把握し、これまでに明らかとなっている細胞形態と生活様式の進化をベースとして、クロララクニオン藻における細胞分裂様式の進化を明らかにすることを目的としている。当該年度は、特に全ゲノム解読が進行中のクロララクニオン藻Bigellowiella natansについて、核分裂の過程を形態学的に明らかにすることを試みたが、細胞の同調率が低いことがわかり、同調培養系の確立に重点を置いた。その結果、初期細胞密度1×10^5cells/mlで培養をスタートし、直後に48時間の連続暗期を1回挿入後2回目の暗期にある程度細胞周期の同調が得られることが判明した。これにより、細胞分裂過程の形態学的把握にむけた道筋を作ることができ、分裂様式の把握だけでなく、クロララクニオン藻細胞に関する様々な研究に有用な成果を上げることができた。本研究の成果は、4件の国内学会・シンポジウムにおける発表中で公表した。また関連事項として、オルガネラ分裂等の分裂関連タンパク質の機能の多様性と進化を今後理解していく土台となる、クロララクニオン藻の葉緑体へのタンパク質輸送機構について、論文にまとめた。
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