本研究は、クロララクニオン藻の主要系統群全てについて、タイムラプスビデオ解析、間接蛍光抗体法、電子顕微鏡などにより、細胞分裂過程の微小管の動態まで含めた詳細な観察を行ない、クロララクニオン藻の分裂様式の特徴を明確にするとともに、群内の細胞分裂様式の多様性を把握し、これまでに明らかとなっている細胞形態と生活様式の進化をベースとして、クロララクニオン藻における細胞分裂様式の進化を明らかにすることを目的としている。当該年度は、昨年度細胞の同調培養法の検討を行ったBigelowiella natansについて、引き続き同調培養法の改善を図り、細胞分裂の同調率として12.5%を得ることができた。この培養条件のもとで微細構造レベルでの核分裂様式の観察に取り組み、核分裂前期、中期、終期に相当するステージの細胞を観察することができたが、後期をとらえることができておらす、今後の課題として残った。また、Gymnochlora系統群に属するG. dimorphaについて、この属に特有の巨大多核細胞の分裂過程をタイムラプスビデオ解析により明らかにし、その細胞分裂様式に2型あることを初めて見いだした。この成果は国際学術雑誌Phycologia誌で公表済みである。また、細胞分裂の進化を明らかにする上で祖先状態を類推する必要があるため、付加的な研究として、クロララクニオン藻が二次共生により葉緑体を獲得する以前の無色ケルコゾア生物の探索を行い、その過程で見つかったケルコゾア生物について、新属新種記載を行った。この成果は国際学術雑誌J. Euk. Microbiol.誌で公表済みである。また、細胞分裂の進化考察のバックボーンとなる真核生物の大系統のアップデートを行い、電子学術ジャーナルのJ.Endocytobios.CellRes.に公表した。
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