近年生物の絶滅はますます加速していると言われており、現に多くの生物が絶滅に瀕している。自然の豊かさを享受するためにも、また子孫により良い環境を残すためにも、生物多様性の維持と希少生物の保護は極めて重要な課題である。本研究では、絶滅危惧種であるホトケドジョウ類を対象として、"保全"(すなわち希少生物の保護と環境の保全)を実践し、本研究がモデルケースとして、特定の生物種にとどまらず、希少生物全般の保護と環境保全ために役立つことを目指している。ダム建設が予定されている愛知県設楽町周辺にて、開発事業による環境破壊からホトケドジョウ類を保護するため、事前調査・移植・事後アセスメントから成る対策を予定し、その一環として23年度の調査研究を行った。 昨年度に引き続きホトケドジョウ類の分布域において、生息状況の調査とサンプルの収集を行い、ミトコンドリア調節領域の塩基配列の決定による集団間の系統解析を行った。また、核DNAの塩基配列の決定も行い、その結果愛知県東部から静岡県西部に分布するホトケドジョウ類が独特の進化史をもつことを明らかにし、下記の国際誌で論文発表した。また、ダム建設が予定されている設楽町の近隣の移植先候補地で、生態学的調査を継続し、この移植候補地が移植先として適していることを確認した。さらに、昨年度と同様に標識再捕によってとの場所のホトケドジョウ類の生息数を見積もる試みを行い、新たな移植先候補地の環境調査も行った。この成果を山梨大学教育人間科学部紀要で公表するとともに、魚類自然史研究会で発表した。
|