昨年度は以下の3項目について作業を進めたが、内容的に最も複雑である交尾器形態の多様化パターンとその要因の解明に力を入れた。 1.交尾器形態の多様化パターンとその要因 日本産ババヤスデ科を主な材料とし、次々と開発される系統的な補正を組み込んだ手法を積極的に取り入れて解析を進めた。様々な手法の適用を検討したことから解析に時間を要したが、交尾器多様化における構造的イノベーションや性的軍拡競走の影響などに関する結果を得ることができ、現在{原稿を執筆中である。また、成果については4回の学会発表を行った。 2.体サイズの多様化パターンとその要因 九州に産するアマピコヤスデ属においては、広域に分布する小型種から大型種が独立に少なくとも3回分化していることが過去の調査からわかっていた。昨年度は、野外調査によりこれらの種の分布の詳細を調べた。その結果、大型種は概ね分布域が異なることがわかった。また、福岡地方において新たな大型種の存在も確認された。今後、調査範囲を広げることで、新たな大型種の発見も期待される。これと並行して、生活史の違いが体サイズ多様化の要因ではないかと考え、飼育による生活史把握を試みたが、幼体の飼育がうまく行かず結果を得ることができなかった。生活史調査法と飼育法の開発は今後の重要な課題となる。 3.機械的隔離 上記の九州産アマピコヤスデ属において、小型種と大型種が同所的に産する地点の材料を用いて交配実験等により体サイズが異なる種間の機械的隔離の有無を確認する予定であったが、多数の同所地点を確認することはできたものの、交配実験は時間的余裕がなく行えず、今後の課題となった。
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