研究概要 |
本年度は日本産ババヤスデ科を材料に、以下の4項目について実施した。 1,交尾器形態の多様化パターンとその要因:交尾器形態および体サイズデータをもとに解析を行った。 交尾器形態の多様化要因は複雑であり、昨年度に続き主要因の特定のために多様な解析を行った。結果として、性的な対立が交尾器形態に作用していることが推定された。現在、この成果に基づいて論文原稿を執筆中である。 2-体サイズの多様化パターンとその要因:幼体のデータを整理し、生活史の延長が体サイズ増大に関与しているとの仮説を立てたが、追加データによる検証はできなかった。 3.機械的隔離:本研究課題の実施中に、九州産のアマビコヤスデ属において、交尾時の機械的隔離によって種分化が生じている可能性が見出された。この仮説の検証の第一ステップとして、九州に広域に分布するアマビコヤスデにおいて交尾器行動を観察し、機械的隔離が生じるための条件である雄の交尾器の予備挿入(精子の授受の前に行う配偶者認識のための挿入)を確認した。 4.まとめ:上記の三項目の結果を総合して、交尾器・体サイズ多様化と機械的隔離の関係について検討した。本研究課題の研究対象は大きくババヤスデ属とアマピコヤスデ属であり、ババヤスデ属については機械的隔離を介した交尾器・体サイズ多様化による種分化を示唆する内容の論文を本研究課題初年度(21年度)に報告しているが、本年度は、アマビコヤスデ属についても機械的隔離を介した体サイズ多様化による多発的種分化の可能性を導く結果を得ることができた。ババヤスデ属では交尾器形態と体サイズの両方が、ナマビコヤスデ属では体サイズだけが機械的隔離に関与していると考えられ、近縁な属問でも違いが見られる。 研究成果については3回の学会発表を行った。、
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