研究概要 |
当初の計画通り、前年度に引き続いて琉球列島周辺のウミヘビ亜科の代表者であるイイジマウミヘビ属、そしてマダラウミヘビ-クロガシラウミヘビ複合種群を中心とした広義のウミヘビ属それぞれを対象に、中琉球と北琉球でさらなる採集を進めるとともに、得られた標本からの組織サンプルの摘出と、残る全身の液浸標本の作製を進めた。組織サンプルについては、各個体から得られたものを複数のバイアルに分けて納めた。これまでの実験でアロザイムにおける変異が予想したほどに大きくないことが強く示唆されたことから、各個体からのサンプルのうちの一部は、より詳細なアロザイム分析を行う際の試料とするため凍結保存し、一方で残りはミトコンドリアDNAの塩基配列変異を検討するための実験試料して99%エタノール液浸の状態で保管し、随時実験に供した。すなわち昨年度の予備実験で確立することのできた手順に従って総DNAを抽出し、同じく昨年度に確立できたプライマーシステムとPCRの温度サイクル条件を組み合わせることで、ミトコンドリアDNAの中でも特にチトクロームb遺伝子、12S・16SリボゾームRNA遺伝子領域について配列決定を進めた。なおPSR産物のうちの一部は試験的に専門の業者に外注し、結果的に精度の高い配列データを得ることができた.こうして得られた塩基配列データを、昨年度分の実験で得られたデータと併せて解析したところ、同じ琉球列島近海産で,形態的には明瞭に異なる2タイプのウミヘビ属個体間で,ミトコンドリアDNAの配列レベルではほとんど差異が認められないといった,興味深い結果が得られた。
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