研究概要 |
23年度は、フクロウに加えて、コウノトリ(兵庫県)、カワウ(滋賀県)、ブッポウソウ(岡山県)、ルリカケス(奄美大島)の巣に共生する鱗翅目及び鞘翅目昆虫相について、広範な地域での野外調査を行った。今までに12科19種の鳥類の巣,202巣を調査したところ,10科29種の鱗翅類の生息を確認したリュウキュウオオコノハズクの巣からは3種のヒロズコガ類、ダイトウコノハズクの巣からは2種のヒロズコガ類と1種のメイガが,フクロウの巣からは、クロスジイガが初めて確認された。シマフクロウの巣からは、クロスジイガとクサモグリガ科sp.、アオバズクの巣からは、イガとウスロイガが出現した。これらのどの種も日本未記録種もしくは新種である可能性が高く、このグループの蛾類の多様性を改めて証明するものになった。また南大東島のモズの巣やウチヤマセンニュウの巣も、多くの蛾類が利用していることが判った。またコウノトリの巣からはアカマダラハナムグリと思われる幼虫を多数見つかった。樹洞性のブッポウソウからはウスグロイガが、同じくヤマガラの巣からはマエモンクロヒロズコガとフタモンヒロズコガが羽化した。 調べたフクロウ類の巣内は、動物性タンパク質が多量に堆積しているにもかかわらず、腐敗臭もなく、巣内のヒナの生息にとって清潔な環境に保たれていることがわかった。このことから、巣内共生鱗翅目昆虫が、巣内の清掃者として、フクロウに相利共生的な利益をもたらす重要な役割を演じていることが推察された。これらの成果は、2011年9月に大阪市大で開催された日本鳥学会大会で「鳥の巣に共生する昆虫相」というタイトルでシンポジウムを開催した。また日本昆虫学会2011年度大会において、発表した。さらに3つの論文をStrix,誘蛾灯、Zoological Journalに掲載した。 現在、さらに数本の論文を、日本鳥学会誌、山階鳥研報などの鳥類学関係の雑誌と国際的な生態学関連の雑誌に投稿すべく、準備中である。
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