研究課題/領域番号 |
21570103
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
星野 卓二 岡山理科大学, 総合情報学部, 教授 (10122392)
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研究分担者 |
高橋 英樹 北海道大学, 総合博物館, 教授 (70142700)
池田 博 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (30299177)
勝山 輝男 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 専門学芸員 (20214356)
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キーワード | スゲ属植物 / 分子系統 / 系統地理学 / 染色体 / 種内異数性 / 葉緑体遺伝子 |
研究概要 |
本年度は、連続した種内異数性が見られるヒメスゲの染色体の分析と葉緑体遺伝子の解析を行った。葉緑体遺伝子はtrnT-L-F、rpL16、rpS16の3領域を解析した。また、オクノカンスゲ亜節とホンモンジスゲ類に属する35分類群の核リボソーム遺伝子ITSとETS-1f領域を解析し、分子系統と染色体の変異との相関関係を調べた。ヒメスゲは西日本に隔離分布することが明にされており、ハプロタイプの解析から、四国地方から豊後水道を経て九州の鹿児島県に分布するタイプと、広島県西端から関門海峡を経て九州の中央山地に分布する2種類のタイプがあることが明らかになった。特に前者のタイプは、四国地方から宮崎県、鹿児島県の東部までの襲速紀区系の植物分布と一致した。また、染色体数は、2n=20から2n=24へ異数的に増加したことが明らかになった。スゲ属植物の分子系統に関する先行研究から、ヌカスゲ節は大きく3つのクレードに分けられることが明らかになっている。その3クレードの一つは、オクノカンスゲ亜節とホンモンジスゲ亜節であった。オクノカンスゲ亜節に属する分類群の染色体数は2n=30~44に変異し、染色体も大型であった。一方、ホンモンジスゲ亜節に属する分類群の染色体数は2n=56~80が観察され、染色体の大きさは、オクノカンスゲ亜節のものの半分以下であった。ヌカスゲ節の分子系統樹から、オクノカンスゲ亜節とホンモンジスゲ亜節は、それぞれ別のサブクレードに分かれ、染色体数や核型と一致していることが明らかになった。スゲ属植物の染色体は、異数的に染色体が増加するだけでなく、倍数性による染色体の増加と、それに伴う染色体の小型化による分化もあることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スゲ属植物カンスゲ類、ホンモンジスゲ類およびヒメスゲの分子系統解析を行ない、種内異数性を伴う染色体の分化と地理的分布の主な方向性を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒメスゲの系統地理学的解析に関しては、西日本の解析はほぼ終了したが東日本のデータが不足しているため、今後は東日本の個体のハプロタイプの解析を進める。また、瀬戸内と九州の一部に隔離分布するアキイトスゲ、オオムギスゲに関しては韓国の個体も入手し解析を進める。スゲ属の節で最も種数の多いヌカスゲ節の分子系統と地理的分布に関しては、染色体の解析と分布域の調査はほぼ終了しており、今後は核遺伝子や葉緑体遺伝子のデータを補充し、染色体の異数性を伴うスゲ属植物の地理的分化を明らかにする予定である。
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