研究課題/領域番号 |
21570103
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
星野 卓二 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (10122392)
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研究分担者 |
勝山 輝男 神奈川県立生命の星・地球博物館, その他部局等, その他 (20214356)
池田 博 東京大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30299177)
高橋 英樹 北海道大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70142700)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スゲ属植物 / 分子系統 / 系統地理学 / 葉緑体遺伝子 / 韓国 |
研究概要 |
平成24年度は、韓国で採集したアキイトスゲとオオムギスゲの葉緑体遺伝子を用いてハプロタイプの解析を行った。ヌカスゲ節のアキイトスゲは中国地方の瀬戸内沿岸地域や島嶼部に隔離分布する種であり、長崎県の対馬および佐賀県にも隔離分布することが明らかにされている。韓国に関しては京都大学の標本庫に木浦より採集されたものが1点のみ保管されているのみで、アキイトスゲの韓国での分布は不明であった。また、オオムギスゲは岡山県、広島県および香川県の小豆島に分布し、韓国にも生育するとされている。本年度は、韓国の木浦周辺を調査しアキイトスゲやオオムギスゲの生育地の確認と葉緑体遺伝子の解析を行った。韓国の全羅南道白星山と佛甲山の2場所でアキイトスゲの分布を確認した。また、オオムギスゲに関しては、全羅南道白星山、三岩峰、無等山の3場所で生育を確認した。採集したそれぞれの種における、葉緑体遺伝子trnT-L-F、rpL16、rpS16、atpB-rbcLの4領域を解析した。 韓国のオオムギスゲは、日本産と調べた遺伝子に関しては違いが認められなかったが、アキイトスゲは韓国全羅南道白星山では日本と異なるハプロタイプが見られた。日本の個体は、瀬戸内島嶼部や沿岸地域で3種類のハプロタイプが、佐賀県唐津市と長崎県対馬の沿岸地域でそれぞれ1種類の合計5種類のハプロタイプが存在することを明らかにした。今回、韓国の個体で新しいハプロタイプが見られ、さらに、それぞれのハプロタイプは広い分布域を持っており、同一集団内では異なるハプロタイプは見られなかった。これらの結果から、アキイトスゲは過去、朝鮮半島から九州北部、瀬戸内地域に広く分布していたが、その後の気候変動により島嶼部や沿岸地域に隔離され、遺存的に生き残ったことが推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は韓国のアキイトスゲやオオムギスゲの遺伝子解析を行うことができ日本に隔離分布するスゲ属植物の系統地理に関して重要な知見が得られた。また、昨年まで進めてきた、スゲ属植物カンスゲ類、ホンモンジスゲ類およびヒメスゲの分子系統解析結果を統合することにより、スゲ属植物が第四紀の気候変動の影響を受けて現在の分布パターンを示すことが推定できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、この研究計画の最終年度である。ヌカスゲ節の分子系統と地理的分布の解析に関しては、ほぼ終了している。また、日本に隔離分布するアキイトスゲとオオムギスゲに関しては、本年度も韓国に調査・採集を予定しており、詳細なハプロタイプの解析を進める予定である。本年度は、これらの研究成果を学会誌や国際会議で発表し公表する予定である。
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