トウヒ属の樹上で形成されるカサアブラムシ虫嬰の形状から、トウヒ属植物の種の同定(おもに化石において)を目的としている。22年度は、(1)国内のトウヒ属植物の補足的調査、(2)国内の化石調査、(3)国外(おもに中国産)のトウヒ属植物調査、を行う計画としていた。 (1) については、ハリモミの調査を九州および山梨県で、トウヒの調査を富山県および長野県で、それぞれ行った。 (2) の化石については、青森県つがる市および茨城県土浦市の最終氷期の地層で調査を行った。トウヒ類の球果は産出したものの、はっきりと虫嬰とわかるものは現在のところ、産出していない。持ち帰ったサンプルが残っているので、これの作業を行うことにより、虫嬰が発見されることを期待している。また、収蔵標本の調査も行ったところ、粉川昭平コレクション(大阪自然史博)にトウヒ属の虫嬰と思われる標本が保存されており、現在、種同定の作業を行っているところである。 (3) の国外産トウヒ属植物については、アメリカ・コネチカット州の農務省北部研究所において標本調査を行った。中国産のトウヒ属虫嬰が多く所蔵されており、日本産と形態的に大きくことなることが判明した。日本の研究室に借り出して観察・スケッチ等の作業を行っている。 国内産のトウヒ属虫嬰について、前年度から行ってきた観察に基づき、形態記載および検索表をつけた論文を、22年度内に完成させる予定であった。執筆はすでに開始しているが、一部の未見の種類があり、また完成には至っていない。まとまり次第、学会誌へ投稿することにしている。
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