研究概要 |
哺乳類卵子を包む透明帯は,3たいし4種類の糖タンパク質からなる網目状構造をもち,受精の時に精子と種選択的に結合する。この結合機構については透明帯の糖鎖部分が関わるとする糖鎖説とタンパク質骨格部分の立体構造が関わるとする超分子構造説が唱えられている。マウスZP3が単独で精子結合活性を示すのに対し,ブタおよびウシではZP3/ZP4複合体が活性を示し各々単独では活性を示さない。平成22年度は,ウシZP3/ZP4複合体の精子結合部位の同定を目指し,ZP3の糖鎖付加部位変異体やサブドメインをバキュロウイルス-Sf9細胞系で発現させ,複合体形成の有無と精子結合活性を調べた。その結果,ZP3のN末端側サブドメインのN結合型糖鎖はZP4との相互作用には必要ないが,精子結合活性には必要であることがわかった。ブタの場合ZP4のN末端側サブドメインのN結合型糖鎖が精子結合に関与することから,透明帯の精子結合部位は近縁の哺乳類間でも異なることが示唆された。ADAM3ノックアウトマウスの精子が透明帯に結合できないという報告に基づき,マウスADAM3とマウスZP2,ZP3をSf9細胞で発現させ,共沈法で相互作用を調べた。その結果,ADAM3はZP2とは共沈したがZP3とはほとんど共沈しなかった。このことから,ADAM3は先体反応後の精子と透明帯との相互作用に係わる可能性が示唆された。X線結晶解析のためにウシZP4前駆体をSf9細胞で発現させたところ,モノマーであった。ブタZP3のC末端側サブドメインを卵巣卵から精製したところダイマーであった。これらの結晶化条件検討を開始したが結晶はまだ得られていない。
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