研究概要 |
哺乳類卵子を包む透明帯は,3ないし4種類の糖タンパク質からなる網目状構造を持ち、少なくとも試験管内では精子との種選択的結合に必要である。ブタおよびウシではZP3/ZP4複合体が精子結合活性を示し、各々単独では活性を示さない。目的1としてブタおよびウシについてZP3/ZP4複合体の精子結合領域の同定を試みた。ウシZP3のN結合型糖鎖がZP3/ZP4複合体の精子結合活性に必要であることを種々の組換え体を作製することによりあきらかにした。ZP3のヒンジ部について種々の欠失変異体を作製したところ0結合型糖鎖付加部位を含む領域の欠失でZP4との相互作用が失われるとともに精子結合活性も失われた。よって、O結合型糖鎖も精子結合へ関与する可能性は否定されず、今後は、欠失ではなく糖鎖付加部位の変異によりO結合型糖鎖の精子結合への関与を調べる必要がある。ブタZP3/ZP4複合体については組換え体作製が進まなかったが、天然の透明帯をリシルエンドペプチダーゼ消化し、産物をゲルろ過クロマトグラフィーで分画したところ、ZP4のN末端領域とZP3のC末端領域を含む分画が精子結合活性を示した。よってブタではこれらの領域が精子結合領域であることが示唆された。今後、組換え体による同定も進める必要がある。目的2として透明帯糖タンパク質の高次構造決定を試みた。組換えブタZP3およびZP4のジスルフィド結合パターンは天然ブタZP3およびZP4と同じであることがわかった。ウシZP4について、成熟体よりも前駆体の方が凝集性が低く結晶化により適していると考えられたが、タンパク質結晶はまだ得られていない。ウシZP3前駆体を試験管内プロセシングにより成熟型へ変換させることを試みた。前駆体は予定通りプロセシングされたもののプロペプチドが強く成熟型に相互作用しており、プロペプチドを解離除去する条件を今後検討する必要がある。
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