研究課題
大腸菌においては膜タンパク質はいくつかの経路を経て膜挿入するが、シグナル認識粒子や膜透過チャネルに依存しない経路は、疎水的相互作用により自発的に膜挿入すると考えられてきた。一方申請者らは、自発的膜挿入反応は生理的濃度のジアシルグリセロール(DAG)が欠如するために起こること、実際の膜挿入は糖脂質MPIaseに依存して起こることを証明した。23年度までの研究で、8種の既知の遺伝子の多重変異株を構築し、DAGの発現量低下や低温における生育の阻害を確認したが、十分なDAGの枯渇は達成できなかった。24年度は機能未知の遺伝子にターゲットを絞り、多重変異株の構築を行った。対象とした遺伝子は、ynbD、yeiU、yfbR、yidJ、yccX、yggFの6種であり、相同性よりDAG生成に関与する可能性が考えられる。これら6種の遺伝子多重欠損株を構築したところ、既知の遺伝子8重変異株同様、DAG発現量の低下、低温での生育阻害が認められた。したがって、これら14遺伝子の適当な組み合わせによりDAG枯渇が達成できる可能性が強い。一方、膜挿入に必須の因子MPIaseの機能解析を行ったところ、MPIaseは膜タンパク質と直接相互作用し、膜タンパク質を可溶化するシャペロン様の機能をもつことが明らかとなった。また、このMPIase-膜タンパク質複合体は膜挿入活性を保持していた。抗MPIase抗体を作製したところ、MPIaseは予想通り内膜に局在することが判明した。さらに抗MPIase抗体によりタンパク質膜挿入反応が阻害されたため、in vivoでもMPIaseは膜挿入に関与することが強く示唆された。これらのことから、MPIaseはタンパク質膜挿入反応を触媒する酵素様の機能をもつことを明らかにし、MPIaseは糖脂質酵素(Glycolipozyme)であるという新しい概念を提唱するに至った。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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