研究概要 |
植物は独立栄養を営んでおり、土壌や大気から獲得した無機態(無機物質)の栄養を有機化合物にしている。窒素源は植物の成長を制限する重要な栄養素で、学術的にも農業生産にとっても大きな関心がある。 高等植物では、窒素は硝酸イオンとアンモニアの形で根から吸収される。硝酸イオンは根や葉においてアンモニアに還元される。引き続くアンモニア同化反応において、アンモニアはグルタミン酸と反応しグルタミン酸側鎖のカルボキシル基のアミド化に使われ、グルタミンとして炭素骨格に組み入れられる。この反応はグルタミン合成酵素により触媒され、ATPがADPに加水分解されるエネルギーを利用する。グルタミンは植物体の組織に移動し、窒素源として各種アミノ酸、核酸塩基などの窒素供給源となる。グルタミン合成酵素は次の反応を触媒し、窒素原子が有機化合物の炭素骨格に組み込まれる最初の重要な反応である。 トウモロコシのグルタミン合成酵素の遺伝子は多重遺伝子で構成され,タンパク質としては,細胞質構成型酵素GS1(gs1a, gs1b),細胞質誘導型酵素GSr(gs1c, gs1d),プラスチド型酵素GS2(gs1e)がある。 GS1aは10量体で,5量体(Ring)が向かい合わせの配置をとっている。原核細胞のグルタミン合成酵素では,6量体(ring)が向い合わせで12量体を構成している。原核生物では,6量体(Ring)が強く結合している。GS1aでは,2個のringの相互作用が結晶構造から弱いことがわかった。このことを実験的に確かめるため,Ring-Ring相互作用に関係しているとみられる残基に系統的に変異体を導入し,F150がRing-Ring相互作用に重要であることがわかった。F150の変異体を3種類作成し,このうちF150V変異体の結晶解析を2.1A分解能で行い,機能との関連を解析中である。
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