研究概要 |
植物グルタミン合成酵素(GS)はATPを駆動力とし、グルタミン酸(Glu)とアンモニアからグルタミンを合成する。同一のサブユニット5つのリング構造が上下に2つ重なった10量体構造をとる。 この研究ではグルタミン合成酵素のイソ酵素GS1aを用いた。5量体の会合領域のアミノ酸残基のミュータントを作成し,相互作用を調べた。Phe150近傍の残基を網羅的に選びAla置換体を作製して,リング間結合部から基質Gluの活性中心への入り口にまたがる領域に、Kmが増大する変異残基が集中した。活性部位からはなれた遠位領域上のG241AとW243Aのそれぞれの結晶化を行い,分解能2.55Å、2.80Åの回折データが得られた。結晶解析から基質親和性に関与する構造要因が活性中心とは別にリング相互作用残基付近にも存在するらしいことがわかった。H249QとF150V,G241A,W243Aの3種類では共にグルタミン酸に対する親和性が低下するが、阻害剤の感受性には明瞭な差があり、前者のみが野生型より阻害効果が著しい。 全ての変異体の結晶構造を明らかにしたところ、改変導入部位以外には有意な構造変化が無かった。H249Qは活性中心の構造変化により基質親和性が低下し、F150V,G241A,W243Aの3種類の変異体の基質親和性の低下は活性中心以外の構造変化によると結論される。 これらを総合するとグルタミン酸の親和性に関与する領域は活性中心に加え、活性中心から離れた場所にも存在すると予想される。その場所はリング結合領域からグルタミン酸の活性中心への入り口に跨ってマップされていた。
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