研究概要 |
昨年に引き続きDNAポリメラーゼ-PCNA-DNA複合体の構造解析を進め、より詳細な構造を明らかにした。昨年度までにDNAポリメラーゼとPCNAの間にPIP-boxモチーフによる既知の結合の外に隣のPCNAサブユニット上にも第2の結合が存在していること、またPIP-boxモチーフによる結合の近傍に、ポリメラーゼの複製モードと校正モードの切換えに関与するグルタミン酸E171が保存されていることを明にしていた。本年度は第2の結合の位置に隣のPCNAの同じ171番目の残基のグルタミン酸E171が配置されていることが分かった。またこの第2の結合のポリメラーゼ側のアミノ酸を調べたところ、3つのアルギニンから形成されるクラスターが存在しており、しかもこの様な塩基性残基によるクラスターが、様々なDNAポリメラーゼにおいて頻繁に存在していることが明らかになった。また、昨年に提唱した切換えの機構のモデルからは、PIP-boxモチーフ近傍のE171はポリメラーゼから離れていることが予想されるが、実際に校正モードにある我々の構造においてもそれが確認された。以上より、両モード間の切換えにおいて、隣り合う2つのサブユニット上の同じE171が用いられ、第2の結合中ではアルギニンクラスターが重要な役割を担っていることが分かった。この切換えの機構を更に検証するため、ポリメラーゼのアルギニンクラスターを潰した変異体を用いて複合体の構造解析を行った。その結果、変異により、複合体は著しく構造が不安定かすることを明確に示すことに成功し、このアルギニンクラスターが構成モードの構造の安定に非常に寄与していること明らかにした。また実際変異体から構成される複合体は著しくexonuclease活性が損なわれることも示された。以上の結果をまとめ誌上発表を行った(Mayanagi et al., PNAS, 2011)。
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