グリコサミノグリカンは、2種類の糖が交互に結合した高分子量糖鎖であり、正確に交互に糖転移反応が行われることで生合成される。ある種の細菌の細胞表面には、ヒトの持つグリコサミノグリカンと同じ構造を持った糖鎖が存在し、それらを合成する酵素の存在が報告されている。大腸菌K5株は、その様な細菌の一つで、ヘパロサン糖鎖をその細胞表面に持っており、それを合成するのは、KifA、KfiB、KfiCという3つの蛋白質の複合体であると報告されている。本研究は、この3つの蛋白質成分が複合体を形成することで、2つの異なる糖転移反応を高速かつ正確に交互に行うと報告されているヘパロサン糖鎖合成酵素複合体(KfiA-KfiB-KfiC複合体)の詳細な反応メカニズムを、立体構造解析を含めて明らかにすることである。この研究を通じて、細胞内で広く見られる連続的に起きる糖転移反応の蛋白質複合体形成による効率化メカニズムを解明することを目指している。 22年度は、21年度に論文として報告したKfiAサンプルを用いて、その結晶化を行った。その結果、基質共存下、非共存下の両条件において、分解能2.8A程度の回折能を示す結晶が得られた。それらの結晶を用いてX線結晶構造解析による立体構造決定を進めるにあたって、SeMet置換体KfiAサンプルの調整、結晶化、及び、水銀誘導体結晶の作成を行った。SeMet置換体結晶および、水銀誘導体結晶において、X線波長を最適化して異常散乱効果を利用した位相決定を試みた。現在、構造決定の為の位相計算を進行中である。
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