研究概要 |
これまでに、高エネルギー加速器研究機構のビームラインBL15Aにおいて収集済みであったChiCの溶液散乱データを解析し、慣性半径R_g(21.6Å)と最大長D_<max>(75Å)を得た。すでに研究代表者らが決定しているChiCの結晶構造(Kezuka et al., J.Mol.Biol.2006)から計算されたはR_gおよびD_<max>の理論値はそれぞれ24.7Åと7gÅであった。ChiCは溶液中では、これまで解析に使用した結晶中とは、異なるドメイン配置を取り、OsChia1b同様、ドメイン問のリンカーにより2つのドメインの配置に自由度がもたらされることが考えられた。昨年度、作製したChiCの基質結合ドメインの結晶性α-キチンに対する結合モデル(Kezuka et al., Proteins2010)は、非結晶性基質より結晶性基質に対して結合特異性の高いChicの性質(Itoh et al., Biosci. Biotechnol. Biochem.2002)と矛盾しないものであった。高い抗真菌活性を示すChiCに対して、基質結合ドメインで結晶性の高い領域に結合し、リンカーの自由度により活性ドメインが周辺のキチン鎖を切断する機構が予想された。一方で、ChiCとは異なるタイプの基質結合ドメインを持つOsChia1bについて結合特異性を実験的に検証するため、ドメイン単独での調製法の検討を行った。大腸菌を宿主として、基質結合ドメインをGSTタグとの融合タンパク質とすることで、可溶性画分に発現できることまでを確認した。今後、タグの切断および以降の精製条件を確立する。抗真菌活性には、基質結合ドメインの寄与が大きいことが知られている。異なるタイプのドメインを持つChiCおよびOschia1bのキチン結合および分解機構に関する知見は、これらが属するファミリー19キチナーゼの抗真菌活性解明につながるものと期待される。
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