ADPリボシルトランスフェラーゼすなわちNADのADPリボシル基を基質タンパク質に転移する酵素とその基質タンパク質の複合体の相互作用を知るため、その複合体の結晶構造解析を目的とする。2008年、我々はウェルシュ菌Iota毒素酵素サブユニット(Ia)-actin-βTADの高次複合体解析に成功した。この研究をさらに発展させるため、異なる基質を認識するボツリヌスC3毒素を標的としてその研究を進めている。C3毒素でRhoAのAsnがADP-リボシル化されると、その下流のシグナル伝達系が不活化、アクチンの重合化が阻止され細胞死が誘導される。C3毒素とその標的タンパクであるRho複合体の構造は明らかでなく、その分子認識機構は依然として不明である。ADPリボシル化毒素の研究をさらに進めるために、このC3毒素とRhoA複合体の結晶構造解析を目的とする。平成21年度、その複合体の鍵と成る基質タンパク質の発現に取り組んできた。RhoAの安定化した発現系の構築のため、RhoAの末端10アミノ酸を欠損させ、さらにF25Nの変異を入れる事によりRhoAの安定化をした。この結果、GSTとの共発現で安定な十分な量のGST-RhoAが可能と成った。またトロンビンカットでGSTを外しても安定なRhoAが得られる事がわかった。このRhoA179F25Nは質量分析を用いたmascot解析により、RhoAである事を確認した。これらの研究により精製のための方法は確立したために、今後、結晶解析のための大量精製を行い、そのC3毒素との複合体の結晶化をめざす。
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