研究概要 |
1、発がん剤azoxymethaneと炎症を誘発させるdextran sulfate sodiumの投与により、マウスに大腸がんを発生させたところ、Neu3ノックアウトマウスで腫瘍の発生頻度が低下していた。これは発癌剤投与により生じた異常細胞がアポトーシスにより排除されたことを示唆している。また発生した腫瘍の大きさはコントロールと差が認められず、これは腫瘍の増殖にはNeu3ノックアウトの影響が無いことを示唆している。 2、発がん剤投与後の大腸粘膜において、EGFRのリン酸化が低下していることがウェスタンブロットにより認められ、ノックアウトマウスではEGFRシグナル伝達系が抑制されていることが示された。同様の実験で、ヒトNEU3を過剰発現するトランスジェニックマウスでは発癌剤投与後にEGFRのリン酸化が亢進し、これによりアポトーシスが抑制されていることを報告している(Shiozaki, et al, Cancer Sci.2009)。以上の結果はNeu3がEGFRシグナル伝達系の制御に深く関与していることを示している。 3、またこの結果は、Neu3が炎症そのもの、あるいは炎症によりにより引き起こされる生体応答に関与している可能性も示している。現在までに炎症に重要なサイトカインであるIL-6、-23、あるいは炎症のメディエーターであるCOX-2の大腸粘膜におけるmRNAレベルを検討したところ、ノックアウトマウスとコントロールで差は認められなかった。さらに炎症に関与する他のシグナル分子の活性化に関して検討を行っている。
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