本プロジェクトでは、ウエスタン・ブロット解析により、ヒト培養細胞の培地中へのインターフェロンγ(IFNγ)の添加によりトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)の発現量が著しく増加することを明らかにした。また、IFNγによりヒトTrpRSの触媒活性ドメイン(mini TrpRS)が翻訳後修飾を受けることも明らかにした。さらに、精製したヒトのチロシルtRNA合成酵素(TyrRS)の触媒活性ドメイン(mini TyrRS)とヒトmini TrpRSに変性剤である尿素を加え変性させた後、蛋白質のリフォールディングを行ったところ、ヒトmini TrpRSは活性型にリフォールディングできる一方、miniTyrRSは不活性型になることが明らかになった。現在、活性型のヒトmini TyrRSにリフォールディングできる実験条件を探索するとともに、ヒトTyrRSとTrpRS間でドメインを置換したキメラ蛋白質を作製し、その構造・機能解析を行い、類似点及び相違点の解明に挑んでいる。本プロジェクトでは、これら蛋白質が多機能性蛋白質へと進化した分子進化過程を解明することにも挑んだ。ヒト、ウシ、マウス、ゼブラフィッシュ、シロイヌナズナTrpRSを発現・精製後、血管新生抑制能の解析を行い、血管新生抑制能のあるTrpRSと血管新生抑制能を持たないTrpRSとを明らかにした。また、マウスES細胞内でalternative splicingによりC末端に6アミノ酸が付加されたTrpRSが高発現していることを再確認した。さらに、マウスTrpRS通常型及び6アミノ酸付加型とを大腸菌で大量発現させ精製後アミノアシル化活性を比較検討し、C末端6アミノ酸付加型TrpRSに特有のアミノアシル化活性制御機構を明らかにした。.
|