多くの疾患に関与することから、メチオニンの代謝、特にその代謝物であるホモシステインの代謝について関心が高まっているが、メチオニン代謝酵素の性質には不明な点が多くある。その中でも本研究ではビタミンB_<12>依存性メチオニン合成酵素(MS)と、その補助酵素であるメチオニン合成酵素還元酵素(MSR)の生化学的性質を明らかにすることを目的としている。 はじめに研究実施計画に記載した通り、cDNAの分与を受け、MS及びMSRの発現系を構築した。ヒトMSR遺伝子では22番目のアミノ酸残基がイソロイシンからメチオニンへ置換される遺伝子変異が知られているが、このアミノ酸置換が酵素の性質に与える影響については詳細な検討は少ない。そこで本研究ではメチオニン置換体MSRの発現系も構築した。これらの酵素を精製し、目的の一つを達成した。また、MSRの新しい生理機能について探求する目的で、ホモシステインを代謝するもうひとつの酵素(ヒト・シスタチオニンβシンターゼ)のcDNAをクローニングし、バキュロウイルス・昆虫細胞培養系で発現・精製した。さらに、MSの上流の酵素であるMTHFRの性質についても若干の新知見を得た。 次に、精製タンパク質を用いてMSR活性の評価方法を新規に開発することを試みた。従来の方法ではラジオアイソトープを用いているので、感度が高い一方、制約も多い。そこで酵素活性の評価を分光学的に行うことを予備的に検討した。これまでの検討ではMSRが結合しているフラビンの吸収スペクトルに妨害され、酵素活性の評価系構築は達成されていない。しかし、分光学的な実験からは反応過程における情報が得られることが多いので、さらに改良を進めて活性の評価方法を確立したい。
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