研究概要 |
1. ヒストンH3K9のメナル化修飾かDNAメナル化活性に与える影響 これまでに、ヒスンH3K9のメチル化修飾とDNAメチル化とに正の相関があることが、生体を用いて、遺伝学的手法により明らかにされている。私は、分子機構を明らかにする目的で、生化学的手法を用いて、ヒストンH3K9のメチル化修飾がDNAメチル化活性に与える影響を、試験管内で調べてきている。本年度は、解析をさらに詳細に行った。 この反応には、再構成したヌクレオソームをとしている。私たちの研究から、酵素は裸のDNAを好んで基質にすることが分かっているため、再構成されずに残存する、または再構成後にはずれたDNAの混入を除外しないと正確に効果を評価できない。そのため、メチル化反応後に、裸のDNAを除去するプロセスを加えたものの、安定的に促進効果を再現することが困難であった。現在、その原因をさらに検討している。ひとつの可能性として、DNAメチル化反応が生じた際には、ヌクレオソーム構造が不安定になり、結果として、DNAを除去する際に用いるヌクレアーゼにより、容易に分解されるのではないかと考えている。そのため、より強い促進効果が得られる条件の探索を開始しはじめた。 2. DNAメチル化維持機構の解析 一旦、ゲノムDNAに、DNAメチル化模様が形成されると、細胞分裂過程でDnmt 1という酵素により、そのメチル化模様は安定に維持される。Dnmt 1は約200kと大きな分子量を持つ蛋白質であり、まだ機能の明らかになっていない領域がある。中でもそのN末端には、独立なドメイン構造が存在することを以前に私たちは報告した。本年度は、その領域をリン酸化する酵素を同定し、リン酸化によりDNA結合活性が低下することを発表した(Sugiyama et al., 2010)。
|