研究課題
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)は、PKCや様々な酵素を活性化するジアシルグリセロール(DG)をリン酸化しフォスファチジン酸(PA)を産生する脂質キナーゼであり、PKCを間接的に抑制する。その生理機能については未だ不明な点が多いが、最近、心臓や免疫系におけるDGKの重要性が報告されている。従って、DGKを作用点とする創薬の開発が望まれるが、現在DGKを作用点とする薬剤はない。そこで、本研究ではこれまでの研究に基づき、PKCとの機能協関を念頭におき、神経系及び腎糸球体機能維持におけるDGKの役割を解明するとともに、将来的なDGKを作用点とするサブタイプ特異的薬剤の開発を目指している。本年度は、昨年ホモ化に成功したDGKαKOマウスにストレプトゾトシンを投与し糖尿病を誘発させ、腎症の指標である尿量、クレアチニンクリアランスなどを野生型と比較した。その結果、DGKαKOマウスは野生型より早く腎症が重篤化することが示唆された。また、腎糸球体において、DGKαはポドサイトに多く発現していることが示された。ポドサイトはスリット膜を形成し腎濾過機能において重要な働きをしていることから、DGKαはポドサイトの機能を調節することによって腎機能において重要な働きをしていることが示唆された。一方、DGKαの機能調節機構解明の一環として、チロシンリン酸化と局在調節の関係を調べた。その結果、c-Srcは22番目及び334番目のチロシンをリン酸化することによりDGKαの細胞質膜移行を誘導するのに対し(業績2)、c-Ablによる218番目のチロシンをリン酸化は核外移行に必須であることが明らかとなった(業績1)。これらの事実は、DGKαは異なるチロシンリン酸化を介して、その構造や結合タンパク質などを変化させることにより、その局在、すなわ「いつ、どこで働くか」を決定していることを示唆していた。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
J.Biol.Chem
巻: 287 ページ: 5507-5517
doi:10.1074/jbc.M111.296897
Adv.Enz.Reg.
巻: (Web)
10.1016/j.advenzreg.2011.09.004
J.Medical Microbiol.
巻: 60 ページ: 625-630
Mol.Biol.Cell
巻: 22 ページ: 1340-1352
http://www2.kobe-u.ac.jp/~shirai/