研究課題
本研究では,ウイルス吸着・侵入過程における受容体糖鎖分子の機能に着目し、受容体糖鎖機能制御化合物(プローブ)を用い、ウイルス初期感染における受容体糖鎖機能および病態形成機構を解明することを目的とする。さらに糖鎖機能制御プローブの低分子化・標的分子特異性向上による分子最適化により、新規作用機序を持つウイルス侵入阻害剤を創出し、ウイルス感染症の制御を目指す。本年度、ウイルス感染初期過程でウイルスと相互作用する宿主細胞糖鎖分子に着目し、糖鎖機能制御プローブを主にデングウイルスの感染および病態発現機構解明、およびウイルス感染制御に用いた。1.糖鎖機能制御プローブと標的タンパク質複合体の生化学的および構造生物学的解析:ウイルスタンパク質-宿主糖鎖分子間相互作用について、プローブ分子の化学的修飾を網羅的に行い、ウイルスタンパク質との複合体の立体構造を、コンピュータモデリング法により解析した。その結果、DENVが持つ結合タンパク質であるEタンパク質上のLys295が3-位硫酸化グルクロン酸誘導体との結合に関与している可能性が示唆された。2.ウイルス-糖鎖分子間相互作用が誘起する細胞内シグナルの生化学的解析および機能の解明:ウイルス感染初期における宿主糖鎖分子との相互作用に関して、デングウイルスタンパク質とスフィンゴ糖脂質を介した相互作用によるウイルス増殖への影響、および細胞内シグナルの重要な場となるスフィンゴ糖脂質が形成する細胞膜ドメイン形成について生化学的性状を解析した。その結果、ラフトと呼ばれる細胞内におけるスフィンゴ糖脂質が形成するマイクロドメインにデングウイルスEタンパク質が分布すること、その分布を阻害するとウイルス増殖が著しく阻害されることを見出した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (16件)
Expert Rev.Anti.Infect.Ther.
巻: 9 ページ: 983-985
Trop.Med.Health.
巻: 39 ページ: 37-43
Biochem.Biophys.Res.Commun.
巻: 412 ページ: 136-142
Microbiol.Immunol.
巻: 55 ページ: 135-140
10.1111/j.1348-0421.2010.00293.x
J.Vet.Med.Sci.
巻: 73 ページ: 125-127