研究課題
H22年度の研究成果を下記する:(1) 肝損傷モデル:前年度では、SHAP欠失マウスは、リポ多糖エンドトキシン/D-ガラクトサミンに惹起される肝類洞内皮への好中球細胞の接着が抑制されたと同時に、生存率が改善したことを見出した。当初、SHAP(IaIの重鎖)欠失マウスを作製する際、欠損させたのはSHAPの産生に必須なbikunin(IaIの軽鎖)の遺伝子である。しかし、SHAP欠失マウスに精製bikuninを投与しても、その肝毒性抵抗性に対する影響が観察されなかった。この結果と類洞内皮表面にSHAP-ヒアルロン酸複合体が蓄積することから、前述の生理機能に関与する分子は、bikuninではなく、SHAPである結論に達した。(2)気道過敏性との関連:前年度では、マウス喘息モデルにおいて、SHAP産生は炎症抑制機序の一つであることを見出した。今年度は、臨床応用研究として、咳喘息患者の気道組織を用いて、アトピー素因のない肺野型肺癌患者の気道組織を対照に、ヒアルロン酸やSHAPの局在と病態との関連について検討した.気道上皮分泌腺周囲におけるSHAP量は対照群より少なかった。また、咳喘息発症後、病程が長い程、分泌腺周囲のHA量が少ない傾向があった.ヒアルロン酸やSHAPはヒト咳喘息における病態進展の抑制に関与している可能性が示唆された.(3) SHAPはCD44-ヒアルロン酸の親和力を高めることによって、生理機能を発揮すると思われる。CD44バリアントフォームのCD44Eはヒアルロン酸以外に、E-selectinとも相互作用する。ヒアルロン酸とE-selectinの細胞接着能を比較した。E-selectin存在下、CD44E陽性細胞はローリングする挙動を示したが、ヒアルロン酸があると、CD44E陽性細胞が粘着した。また、CD44Hとの親和力はともに低く、生理条件下でもCD44H陽性細胞の接着が観察されなかった。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Trends Glycosci Glyc
巻: 22(124) ページ: 80-88
J Aichi Med Univ Assoc
巻: 38巻 ページ: 29-42
Int Arch Allergy Imm
巻: 153 ページ: 223-233