申請者は、硫黄供給酵素Nfs1から硫黄原子の供給を受けるサイトゾルのtRNAと鉄硫黄クラスターへの硫黄運搬経路の解明をめざし、硫黄運搬タンパク質Uba4の生理機能解明を通して、サイトゾル内での硫黄運搬経路、ならびにミトコンドリアからサイトゾルへの硫黄運搬経路を明らかにすることを本研究課題に掲げている。その解析の中心となるタンパク質Uba4は、MoeBドメインと呼ばれるATPアデニル化活性部位と硫黄付加に関わるロダネース部位を持ち、双方が硫黄の受取、硫黄付加タンパクUm1への受け渡しに必要であると考えられる。そこで、初年度にあたるH21年度には、まず、酵母のサイトゾルtRNAへの硫黄付加の初期段階に関わると考えられる、非致死遺伝子UBA4の欠損株に、部位特異的変異を導入したUba4タンパク質を発現せた株を複数種類作成し、それぞれの変異Uba4がtRNAチオ修飾を回復しうるかどうかを調べた。そして、この機能相補実験の結果、Uba4の二つのドメイン構造がともにtRNAチオ修飾には必要であることが明らかとなった。今後はこれらの変異株を用いてtRNAへの硫黄付加と鉄硫黄クラスター形成能の比較解析を行なう予定である。現在、Uba4欠損株及び、変異Uba4を含む株におけるサイトゾル鉄硫黄タンパク質の活性測定にも着手しており、サイトゾルの鉄硫黄クラスター形成とUba4への硫黄付加の解明につなげたい。
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