申請者は、硫黄供給酵素Nfs1から硫黄原子の供給を受けるサイトゾルのtRNAと他の含硫小分子への硫黄運搬経路の解明をめざし、サイトゾル内での硫黄運搬経路、ならびにミトコンドリアからサイトゾルへの硫黄運搬経路を明らかにすることを本研究課題に掲げている。これまでに、中心となるタンパク質Uba4のロダネース部位が硫黄の授受に重要な役割を果たすことを明らかにし、さらに、この部位を有さない大腸菌の硫黄運搬に関わるMoeB(酵母Uba4の部分的な相同タンパク質)との比較を行い、Uba4のロダネース部位が真核生物における硫黄運搬に特有のものであることを明らかにした。また、Uba4が硫黄を受け渡すUem1についても解析をおこなった。Urm1はユビキチン様タンパク質(Ub1)である。真核生物にはユビキチン以外にも多種類のUb1タンパク質が存在し、いずれも、β grasped structureと、C末端にグリシン残基を有することが特徴である。このC末端グリシン残基は、例えばユビキチンの場合は相手方タンパク質システイン残基の硫黄原子との間にチオカルボキシル結合を作ることで両者が反応するために、重要である。申請者らは、サイトゾルでの硫黄運搬に関わる酵母Uba4とUrm1においても、このUb1特有のカルボキシル末端のグリシンへのチオカルボキシル基形成が、その後ターゲットとなる分子に硫黄を付加するのに必須であることを見いだした。他のUb1タンパク質との比較も踏まえ、現在、Um1-Uba4間の機能-構造相関関係についてまとめつつある。
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