研究概要 |
α2,6-シアル酸の付加によって血管内皮細胞の機能がどのような分子メカニズムで制御されるか明らかにするために、α2,6-シアル酸の生成を担うシアル酸転移酵素ST6GalIを遺伝的に欠損させたノックアウトマウス(α2,6-シアル酸欠損マウス)と、コントロールマウス(野生型マウス)の比較解析を行っている。まず第一に、両マウスの肝臓から血管内皮細胞を単離し、解析した結果、α2,6-シアル酸欠損細胞では、血管内皮細胞の主要な接着分子であるPECAMの局在変化が起きていることが分かった。また、PECAM自体にα2,6-シアル酸が結合していることも明らかにした。通常、PECAMは細胞表面、中でも細胞間接着部位に濃縮して存在してPECAM同士が相互作用しているのに対し、α2,6-シアル酸欠損状態ではPECAMが細胞表面にとどまることができず、細胞内に取り込まれていた。この分子的背景として、PECAMがシアル酸依存的にホモフィリックな相互作用をしていることをin vitroの実験系で明らかにした(J. Biol. Chem. 285,6515-6521(2010))。今年度は、PECAMがどのようなシアル酸含有糖鎖を認識するのか明らかにするために、各種オリゴ糖を用いて実験を行った。またEMARSと呼ばれる細胞表面の複合体を検出する方法を用いて、α2,6-シアル酸欠損によって、PECAM以外にも細胞表面の機能分子が減少していることを見出し、機能的な障害が見られるかどうかも確認している。
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