細胞外に分泌または細胞膜上に提示される蛋白質の多くは、糖鎖修飾を受けることによって正しい機能を発揮する。そのような糖鎖修飾のメカニズムを明らかにするために行ったゲノムワイドスクリーニングから、我々は、新規に122種類の糖鎖制御遺伝子を同定することに成功した。これらの遺伝子間の相互作用について、in silicoで解析したところ、いくつかの機能的なネットワーク構造が見出された。糖鎖修飾におけるネットワーク構造が、世界ではじめての報告である。さらに、同定した遺伝子産物のドメイン検索を行ったところ、RNA結合ドメインをもつものが18種類見つかった。そこで本研究では、同定した糖鎖制御遺伝子の中から特にRNA結合ドメインをもつ遺伝子について解析を進めた。特に、神経細胞特異的な糖鎖修飾を制御する遺伝子としてSwmを選び、その機能解析を行った。その結果、神経特異的な糖鎖を合成する酵素FucTAのmRNAに直接結合し、その発現量を選択的に制御していることがわかった。また、Swmと遺伝学的相互作用が報告されている細胞外シグナル因子、Hedgehog(Hh)についても解析を進めたところ、神経特異的な糖鎖修飾がHhによって負に制御されていることも明らかにできた。SwmもHhも哺乳動物でも保存されている遺伝子であるので、このような神経特異的な糖鎖修飾を制御するメカニズムは、広く生物界で保存されている可能性があると考えている。
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