研究概要 |
in vitroの上皮細胞に自発的な集団運動を誘引させるため,タイプI型コラーゲンからなる軟らかいゲル基質上に上皮細胞(MDCK細胞)を播種し,下記の実験を行った. (1)細胞-基質間の接着構造の解明 軟らかいゲル基質においては,リーダー細胞のみが基質との接着部位にintegrin-β1を発現し,リーダー細胞以外の細胞(フォロワー細胞)はintegrinファミリーとは異なる接着タンパク質を発現していることが明らかとなった.さらに,integrin-β1の活性阻害剤として作用するモノクローナル抗体(AIIB2)を集団運動中の細胞に投与したところ,リーダー細胞のみが運動を停止し,フォロワー細胞は運動し続けた.このことは,リーダー細胞の運動にとってintegrin-β1の活性化が必須であることを示している. (2)リーダー細胞の出現解析 ゲル基質の硬さが上昇するにつれて上皮-間質転換が誘引され,リーダー細胞の出現頻度が上昇することが明らかとなった.さらに、リーダー細胞では細胞内張力を制御するII型ミオシン調節軽鎖二重リン酸化されており,細胞が基質に加え把握力が顕著に上昇していることも明らかとなった. (3)細胞間接着におけるメカノセンサーの探索 細胞間接着構造の構成タンパク質のひとつであるp120-cateninが,細胞間に「力」を伝達するメカノセンサーである可能性が免疫蛍光染色およびRNA干渉実験によって示唆された.さらに,軟らかい基質上では,細胞の基底部にもp120-cateninが局在することが明らかとなった.このことは,p120-cateninが細胞間接着のみならず,基質との接着にも関与することを示唆している.次年度で,p120-cateninと集団運動との関係を明らかにする.
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