研究概要 |
筋肉の細いフィラメントの構成成分である、アクチン、トロポミオシン、トロポニンの各分子の結晶構造はすでに解明されているが、これら分子の超巨大集合体のフィラメント構造の詳細は明らかではない。トロポミオシンがアクチンフィラメントにどのように結合しているかの詳細を知る為に、アクチンとトロポミオシンの結晶構造座標を使い、蛍光エネルギー移動の測定値ともっともよくあう配置を計算機実験により求めることにより、トロポミオシンとアクチンフィラメント複合体のアトミックモデル作成を目指した。まず、トロポミオシンの蛍光エネルギー移動測定領域を146-174に区切り、146から174迄の残基7つ目ずつをシングルシステインにした変異トロポミオシンを調製し、これにエネルギー供与体を、アクチンのCys374,Gln41,結合ADPにそれぞれエネルギー受容体を結合させ、これら15ポイント間の蛍光エネルギー移動測定を行うことにより、アクチンートロポミオシン(region : 146-174)複合体アトミックモデルを作製した。更に、トロポミオシンの領域83-111においても同じようにシングルシステインを導入した変異トロポミオシンを調製し、これら15ポイント間の蛍光エネルギー移動測定を行い、この領域とアクチンフィラメントとのアトミックモデルを作成した。トロポミオシン全長とアクチンフィラメント複合体のアトミックモデルをめざし、蛍光エネルギー移動測定領域を更に、41-69と216-244の2つ増やしてこれら領域にシングルシステインを持つ変異トロポミオシンを調製し、これらを使っての蛍光エネルギー移動測定を行い、これら領域とアクチンフィラメントとのアトミックモデルを作成しつつある。本プロジェクトのアトミックモデル構築法はX線結晶構造解析ではなし得ない、巨大タンパク質複合体の高次構造解明の為の新しい手法を提供するものである。
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