研究概要 |
本研究の目的は、人の健康やタンパク質の生産の上で深刻な問題となっているタンパク質の凝集の問題を解決するために、タンパク質の解離・会合を制御する技術を開発することである。圧力はタンパク質の解離・会合を制御する一つの有力な手法となりうるため、本研究では、高圧力を用い、天然状態・変性中間体の構造を観測可能にする条件、凝集体・封入体からの巻き戻し条件、アミロイドの圧力解離の条件等を検索し、制御の基盤となる一般的法則を見出すことを目指している。 本研究では、高圧NMR法を用い、高圧下で凝集を抑制した条件で、タンパク質リゾチームの変性初期過程を観測し、準安定状態および変性中間体を平衡条件下で初めて観測することに成功した(Kamatari et al.,Biophys Chem. 2011)。そして、初期過程に水がタンパク質分子内のキャビティーに入り込んでいくことを示した。また、種の異なるリゾチーム間でキャビティーの位置が保存されていることを明らかにし、キャビティーが準安定状態の出現やタンパク質の機能発現にとって重要な役割を果たしていることを示した。本研究成果は3月の国際学会で発表予定だったが、震災のため延期されたため、23年度に開催された日本生物物理学会年会で発表した。
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