研究概要 |
本研究の目的は、人の健康やタンパク質の生産の上で深刻な問題となっているタンパク質の凝集の問題を解決するために、タンパク質の解離・会合を制御する技術を開発することである。圧力はタンパク質の解離・会合を制御する一つの有力な手法となりうるため、本研究では、高圧力を用い、天然状態・変性中間体の構造を観測可能にする条件、凝集体・封入体からの巻き戻し条件、アミロイドの圧力解離の条件等を検索し、制御の基盤となる一般的法則を見出すことを目指している。 4000気圧まで制御可能な高圧蛍光装置を完成させ、リゾチームおよびプリオンタンパク質を用いてアミロイド繊維の圧力解離実験を行っている。現在条件の最適化、株の違いによる圧力応答の違い等を検討中で、その後、発表予定である。 また、我々は凝集抑制のために、圧力だけではなく低分子化合物の効果も検討した。これまでに、タンパク質の凝集により起こるアミロイド病の一つであるプリオン病に対して、低分子化合物を用いた制御が有効であることを示してきた。本年度は、この化合物の最適化を行い、より効果の高い化合物を見いだした(Kimura et al., Bioorg Med Chem Lett.21, 1502, 2011)。また、抗プリオン効果を発揮するために重要な部位を同定し、さらに、その作用機構についても推定した(論文執筆中)。
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