研究課題
レチナール分子を発色団にもつ1種類のタンパク質からなる、最も単純な光エネルギー変換装置が高度好塩性古細菌の細胞膜に存在している。このタンパク質は、古細菌型ロドプシンと呼ばれ、現在では、古細菌以外にも、海洋性細菌をはじめ、地球上に広く分布している。本研究では、好塩性好アルカリ性古細菌Natronomonas pharaonisなに存在する光駆動性の塩素イオンポンプであるハロロドプシン(phR)について、構造解析を中心にその分子メカニズムを知る事を目的としている。昨年度の基底状態の構造(pdb:3A7K)に加えて、今年度は、塩素イオンフリーの構造(pdb:3QBG)を決定し、さらにそこに色々な陰イオンを添加した状態での結晶構造を決定した。この過程で、AヘリックスN末とB-Cループの構造から出来る蓋構造が、膜電位依存的に塩素イオン通路を開閉している事を示唆する実験結果を得た。phRを大腸菌で発現させると、大腸菌の培地中の塩素イオン濃度(70mM)では、十分塩素イオン結合型のphR(塩素イオンに対するKm値は1.7mM)として存在するはずなのに、結合していない青色の状態になっている。ここにTPMPを添加して膜電位を消す事で、塩素イオン結合型の紫色をしたphRに変化する。先に述べた蓋構造を形成するB-Cループ部分を除去した変異株を作成して大腸菌に発現させると、最初から塩素イオンを結合した紫色の状態で発現する。現在、再構成系を用いて、これを証明する試みを行っている。
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